2023.1.19
先ず、河内長野市です。1月6日に同市教委が、「学校生活におけるマスクの着用について」をホームページに掲載しました。
そこには、「保護者や地域のみなさまへ」と題し、「様々な事情により、マスクを着用しない、できない児童生徒がいます」「児童生徒本人や保護者等の意に反してマスクの着脱を無理強いすることのないよう」「マスクの着用の有無によって差別やいじめの対象とされることのないよう」と三拍子を揃えました。これは事実上の「学校マスク自由化」で、同じ大阪府の豊中市の記述を参考にしたものと推察されます。
加えて、「体育の授業や運動部活動、登下校の際には、児童生徒に対してマスクを外すよう指導します」としています。
これらを各学校長を通じ、各家庭に通知を配布しました。
次は松原市です。1月10日付け教育委員会ホームページに。「保護者のみなさま」として、「1月10日以降の新型コロナウイルス感染症対策について」と題し、「マスクの着脱について」の項を設けています。
ここには、「健康上の理由だけでなくさまざまな事情により着用しない、着用できない」児童生徒がいるとして、「マスク着用の有無が偏見やいじめにつながらないよう」と書き込んでいます。
併せて、「給食時指導について」と題し、「喫食場面では自然な会話程度を行うことは可能」と記述し、黙食も廃止を謳いました。
同時に各市立小中学校校長にも通知した上で、各校から同様の通知を教育委員会と校長の連名で、保護者宛にも配布しました。
実は、ここに至った背景には、昨年11月24日、市民グループ「SMILE WAVE大阪支部」の奥谷友香理代表が議会に請願し、12月12日に参考人として、議会の福祉文教委員会にて陳述したことが大きかったのです。請願は2つあり、「子どもの新型コロナウイルス感染症対策における差別や圧力防止対策の強化を求める請願」と「子どもの新型コロナウイルス感染症対策における黙食ルールの見直しを求める請願」です。
この中で特に前者において、市側がかなり抵抗を示しました。これに対し自由民主党の池内秀仁委員は、参考人が提出した神奈川県葉山町、北海道石狩市、山口県岩国市の教育委員会声明にある事実上の「マスク自由化」を引き合いに出し、「これを保護者に通知することで不都合が生じるのか?」と当局を追求。教育委員会は学校でマスクを着けさせようという意図から、はぐらかしの答弁に終始したものの、最終的には「不都合は生じない」と認めざるを得なかったのです。
令和4年松原市議会福祉文教委員会 請願参考人説明・質疑 議案説明・議案質疑【1:10~19:46、59:19~1:48:37】
これらの質疑を経た後、同委員会では同日、両請願共に全会一致で採択されました。
令和4年松原市議会第4回定例会 福祉文教委員会委員会 討論・採決【0:45~3:27】
また通知には、最後に「卒業式、入学式について」と題し、「来校される保護者の人数の制限は行いません」と記述されました。これは大きく踏み込んだ内容となりました。
続いて同じ1月10日、吹田市教育委員会は、事実上の「学校マスク自由化」声明を、学校教育部学校教育室名でホームページに発表しました。
また、各校長を通じて教育委員会名での通知を全保護者に配布。それには「保護者の皆様へ」として、「市立小・中学校における今後の教育活動について」の中で、「マスクを着用しない、できない児童生徒がいます」「児童生徒・生徒本人や保護者等の意に反してマスクの着脱を無理強いすることのないよう」「マスクの着脱がいじめや差別につながらないよう」と、これも三拍子を揃えました。
更に給食及び昼食において、「大声は控え、15分を超えない会話は可能」と記述し、黙食を廃止しました。
ところで同市に対しては、「全国有志子どもを思う会大阪支部」が昨年12月16日に要望書を提出しており、功を奏した格好です。
加えて、過去3家庭が「ノーマスク学校生活宣言」を小学校長にしており、このことも貢献したと推察されます。具体的には、第260号家庭では、昨年12月2日に学校生活宣言、12月16日には「ノーマスク学童宣言」も行いました。
一方これらの背景には、1月5日に大阪府教育庁が発出した「学校園における新型コロナウイルス感染症対策マニュアル(市町村立学校園版)」が改訂されたことに基づいています。
但しこの通知には、内閣官房や厚労省が発出している「本人の意に反してマスクの着脱を無理強いしないよう、丁寧な周知」、いわゆる「マスク警察禁止」は盛り込んだものの、「学校マスク自由化」まではさすがに踏み込んでいませんでした。
しかしながら、「マスク着用の有無やワクチン接種の有無によって児童生徒へ心ない発言をしたり」しないよう指導との記述が、完璧とは言えないまでもせめてもの救いとなりました。
これらにより、大阪府では昨年5月23日の和泉市を先頭に、12月19日の豊中市に続き、計5自治体教育委員会での学校マスク自由化となりました。
因みに、学校マスク自由化の定義は下記です。
- マスクを「着用できない」のみならず「着用しない」まで記載されている。
- これらに対し、差別や偏見が生じないようにする。
- 上記内容を教育委員会若しくは教育長名で声明発表するか、全保護者宛に通知する。
結局、全国における学校マスク自由化の過去の実績は、下記17団体となりました。
- 令和4年 4月 1日 東京都 多摩市(教育長名でHP声明発表)
- 令和4年 5月23日 大阪府 和泉市(教育長名でHP声明発表、全保護者に通知)
- 令和4年 6月10日 茨城県 つくばみらい市(教育長名で校長宛通知→全保護者に文書配布)
- 令和4年 7月 5日 埼玉県 所沢市(教育長名でHP声明発表、全保護者に通知文書配布)
- 令和4年 7月 6日 北海道 恵庭市(教育長名でHP声明発表、全保護者に通知文書配布)
- 令和4年 7月20日 岐阜県 瑞穂市(全保護者に教育委員会名で通知文書配布)
- 令和4年 8月29日 広島県 福山市(全保護者へ教育委員会名でメール配信、通知文書配布)
- 令和4年10月25日 神奈川県葉山町(全保護者に教育委員会名で通知文書配布)
- 令和4年10月25日 北海道 石狩市(全保護者に教育委員会名で通知文書配布)
- 令和4年11月 8日 京都府 亀岡市(教育長名で校長宛通知、市HP、facebook、LINEで声明)
- 令和4年11月14日 神奈川県相模原市(全保護者に教育長名で文書をリンク付け配信)
- 令和4年12月 2日 山口県 岩国市(教育長名でHP声明発表、学校裁量で保護者に通知)
- 令和4年12月 5日 福岡県 福津市(教育長名でHP声明発表、学校裁量で保護者に通知)
- 令和4年12月19日 大阪府 豊中市(教育委員会課名で市HP声明発表、校長に通知)
- 令和5年 1月 6日 大阪府河内長野市(教育委員会課名でHP発表、校長から保護者に通知)
- 令和5年 1月10日 大阪府 松原市(教育委員会名でHP発表、校長から保護者に通知)
- 令和5年 1月10日 大阪府 吹田市(教育委員会室名でHP発表、校長から保護者に通知)