県知事や市町村長におけるコロナ感染症対策の権限を問う!

新型コロナ問題

2022.09.08

 富山県の新田八郎知事は、去る9月2日に記者会見を行い、県独自で全域を対象として発令している「新型コロナ感染拡大警報富山アラート」を9月27日まで延長すると表明しました。緊急事態宣言下でもなく、まん延防止等重点措置も指定されてない中で、このような過剰なコロナ感染症対策が全国に散見されます。

20220912富山県知事

 この法的根拠は、新型インフルエンザ等対策特別措置法第24条第9項で、下記の如く記述されています。即ち、「都道府県対策本部長は、新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があるときは、公私の団体又は個人に対し、対策の実施に関し必要な協力の要請をすることができる」です。但し、この要請はあくまでお願いであって、罰則はありません。
 それは、後追いで追加された第31条の6によるまん延防止等重点措置と違って、命令権や罰則がないからです。併せて既存の第33条第2項に掲げる緊急事態宣言下における市町村長等への指示権も付与されてないため第45条に基づく罰則もありません。
 そこで、改めて「富山アラート」の内容を見ますと

  1. 病院に対する症状の安定した患者の早期退院等
  2. 風邪症状者への平日昼間の受診
  3. 軽症・無症状者への「新型コロナ陽性者登録センター」の活用
  4. コロナワクチン接種の推奨
  5. 学校や家庭内での感染症対策の徹底
  6. 食料・日用品・薬の確保

となっています。これらを見る限りは、特に一般県民に不利益はないようです。

20220912富山アラート

 また、昨年9月28日、広島県の湯崎英彦知事が発表した、「新型コロナ感染拡大防止集中対策」では、緊急事態宣言が解除された後も10月1日から14日まで集中対策期間を延長しました。その中で、指定重点区域(広島市、東広島市、府中町、海田町)においては、酒類提供店舗への時短要請を継続するとしたのです。
 緊急事態宣言下では特措法第45条を根拠に、命令に従わない店舗には、政令で30万円以下の過料を課すとしていますが、宣言解除後は、これは叶いません。
 しかし現実には、要請に従わないと、収益減への補填を目的とした「頑張る中小事業者月次支援金」の対象外となったり、重点区域においては、第3者認証制度「広島積極ガード店」の認証を得て、営業時間の優遇を受けることもできません。つまり、事実上の差別化が図られていることになります。要請に背けば不利益となるため、半強制的と言えましょう。

20220912広島県知事

 一方、市町村が独自に警戒警報を発令することができるのでしょうか?
 特措法第36条に、市町村対策本部長の権限が定められています。しかしあくまで総合調整や、都道府県対策本部への要請、教育委員会への要求に止められており、市民への要請はありません。
 ところが、市町村独自で新型コロナ対策に係る警戒警報を発令している自治体が散見されました。
 具体的には、昨年8月、広島県はまん延防止等重点措置に指定されましたが、県は三次市を対象外としました。緊急事態宣言は全県下が対象ですが、まん延防止の場合は、県内の一部のみが対象となるからです。
 ところが、三次市長は当時、独自の警戒警報を発令したことで、三次市外から講師を招聘する講演会に関し、市民団体による公共施設利用を取り消したのです。このため、当初契約をしていた三次市十日市コミュニティセンターを利用できず、急遽会場を民間施設に変更せざるを得ませんでした。市外からの往来を抑制することで、感染防止に寄与できるというのが大義名分のようです。

20220912三次市十日市コミュニティセンター

 また昨年9月、天理市はやはり独自の警戒警報を発令し、天理市外から講師を招く講演会に対し、天理市民会館の使用を認めない暴挙に出たのです。この時奈良県は、緊急事態宣言下でも、まん延防止措置重点地区にも指定されていませんでした。このため、同県内の香芝市の公共施設に変更させられたのです。またもや主催団体は、大きな不利益を被りました。

20220912天理市民会館

 これらの2例は、共に法的根拠なき、市長のパフォーマンス的色彩が濃いものであり、しかも、市民に対し不利益を生じさせたことはもってのほかで、違法行為と言えるでしょう。即ち特措法第5条には、基本的人権の尊重が謳われており、「新型インフルエンザ等対策を実施する場合、国民の自由と権利への制限は必要最小限でなければならない」としているからです。加えて同法第13条第2項には、「国及び地方公共団体は、新型インフルエンザ等に起因する差別的取扱い等が行われるおそれが高いことを考慮して、何人も差別的取扱い等を受けることのないようにする」とあります。
 更に地方自治法第244条には「公の施設」規程があり、その第2項には、「地方公共団体は、正当な理由がなければ住民が公の施設を利用することを拒んではならない」とあり、第3項には、「地方公共団体は、住民が公の施設を利用することに、不当な差別的取扱いをしてはならない」と記述されているのです。
 これらは、憲法第11条基本的人権や第14条法の下の平等から導かれる法律なのです。

 そもそも、グローバルダイニング訴訟では、緊急事態宣言下の東京都からの飲食店時短要請命令を不服として、長谷川耕三社長が訴訟を提起されましたが、去る5月16日に第1審判決が出て、都の時短命令は違法と判断されたのです。但し都の過失は認められず、104円の損害賠償請求は棄却されました。
 自然共生党代表の谷本誠一呉市議会議員は、特措法による都道府県知事への命令権付与そのものが憲法第14条法の下の平等、第21条表現の自由、第22条職業選択の自由(営業の自由)に違反している悪法とみています。

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